PROFILE
鈴木昭男は、サウンド・ア−トの先駆者的存在として知られるが、その活動・作品形態はおよそ一般的なサウンド・アートの範疇にとどまるものではない。「音と場の探求者」として多くの分野の芸術家達から注目されている。
彼の活動は、1963年、名古屋駅の階段でバケツ一杯の“ガラクタをぶちまける”というパフォ−マンスを発端としている。これは「バランスの良い階段に、物を投げると、心地よいリズムがかえってくるのではないか」という『聴く』ことを主体とする欲求から発想されたものである。以来、現在にいたるまでこの姿勢を崩すことがない。

60年代に遊び心から始めた“Self-Study(自修)Event”では、自然界を相手に一人「なげかけ」&「たどり」を繰り返す。そこで得られた体験から、70年代には合わせ鏡の構造を持つ「ANALAPOS」というエコ−楽器を創作する。さらにこの楽器の延長線上となる「ひなたぼっこの空間(1988)」では、同じ構造の二面の巨大な壁を造築し、この空間で一日自然の音に耳を澄ますという試みを行なった。ここでまた新たな『聴き方』を発見することになる…観念的には空間に閉じ込められた音は、地球を一周することになるのだ…。

また70年代後半から80年代にかけてコンセプチャル・サウンドワ−クと称されるパフォ−マンスを展開。彼自身が取り決めた単純で厳格なル−ルに基づき、身近な素材を使って“知的な遊び”を繰り広げる。無意味な即興演奏に対する批判という側面を持ちつつも、常に『聴く』側にまわることを意識して、場との関わり方を模索していく。この頃より欧米へ頻繁に行き来するようになり、秋の芸術祭(パリ・1978)、ドクメンタ8(カッセル・1987)など主要な音楽際に招聘され、高く評価される。

90年代に入りサウンド・ア−ト界の隆盛に伴い、ベルリンを中心として数多くのインスタレ−ションを手掛ける。特筆すべきはベルリン/パリ/ストラスブ−ルでの街のエコ−ポイントを探る「点音(おとだて)(1996)」、ザ−ルブッルッケンの市立ギャラリーで発表した「花(1997)」、人は音を発掘すると題された「pyramid(1999)」など、無音のサウンド・インスタレ−ションを発表したことだ。これら無音の作品群は、過去の認識論としての音楽を問うたものではなく、音楽の所在そのものにまで踏み込んだものである。作品との遭遇によって喚起された体験者自身の過去の経験や記憶が、新たな経験として再構築されることが、作品を『聴く』という根源的部分にまで到達しているのである。

また近年、ベルリンのdaad画廊で発表した「tubridge(1999−2000)」での体験は、彼のその後の作品に新たな展開を与えることになった。自らが音源を録音・作成し、独自に考案した出力装置を持つ電気音響を取り入れることにより、音を再構築し“場の因子”を『聴く』実験が実現した。ベルリンSFB放送局ホワイエでの音のドロ−イング「Mowe(2002)」、場の構築に対する一つの提言を含む「なげかけ&たどり(2002)」である。訪れた人は、降り積もる空間としての時間軸である作者設定の「場」を体験することになる。

これと平行して、2002年ロンドンのブルネイ・ギャラリ−・レクチャ−・シアタ−で始めたシリ−ズ「もがり」では、彼の家系に古代より伝えられる自然石そのままの“stone−flute(磐笛)”の吹奏を主軸に、その時々の空間や場をとらえ、予測不能の圧倒的パフォ−マンスで、音楽を通じての自身の帰結を探っている。



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